今日は、全く趣きを変えて、一編の作文をご紹介しますね。
お時間の許すときにお読みいただければ、幸いです。
友 情
中三のときのエコーママ作
あきらと進一は、M中学校の三年生だ。ふたりとも。中学一年のときからトップを争ってきたライバルである。勉強にしても、運動にしても。
一・二年のころは、ふたりとも同じような成績だったが、三年になってからは、あきらの方が成績がよかった。
「おまえ、このごろあきら君に負けてばかりじゃない。もっとがんばらなきゃ、だめよ。」
進一の母は、顔を見るたびに言う。進一も、平気な顔をしてはいたが、内心くやしくてたまらなかった。
「ようし、いつかきっと、ぬいてやろう。」
と心にいいきかせていた。
あきらも進一もバレー部だ。バレー部の練習はきつかった。毎日毎日、日が沈むまでコートでボールを追った。ふたりはここでもライバルだった。ふたりの対立のために、チームが乱れ、先生にしかられることもしばしばあった。
あきらにも進一にも、親友はいなかった。なぜならば、ふたりとも勉強ひとすじで、友だちなんかつくるひまがなかったのである。ふたりとも、親友のいる人を見るとひどくうらやましかったが、結局どうすることもできなかった。無理もない。勉強ばかりしているあきらや進一には、クラスメートは近づいてこなかった。そんなふたりならば、友だちになればいいのに、それもできなかった。お互いに友だちがほしいのに、合えばすぐに勉強の話になってしまう。それ以外のことはあまり話さないので、お互いの性格もわからない。
あきらも進一も、寂しかった。その寂しさを勉強やバレーにぶっつけたのである。
お互いに心を開こうとしないふたりは、ますます対立していった。
そうこうしているうちに一学期は過ぎた。義務教育最後の夏休みがやって来た。
進一は、あきらをおいぬくために猛勉強を始めたのである。毎日毎日暑いのに、進一は海にも山にも行かず、ただ勉強した。そんな進一の姿を両親は、満足そうに見ていた。全く、親というものは、子どもが机の前にすわっていれば、安心なのだ。
そして二学期―。
進一は、あきらを見ておどろいた。まっ黒に日焼けしていたからである。
まっ黒な顔に白い歯がまぶしい。
「やあ、二週間ばかり海の親戚の家へ行っていたんだ。毎日泳いでこのとおりさ。」
「勉強はしなかったのか?」
「したよ。少しね。だけど泳いでいたら勉強なんかばからしくなった。」
進一はびっくりした。あきらがすごく明るくなったような気がしたからだ。
以前のあきらは、こんなことなかったのに。
夏休みが終わって早々、実力テストが行われた。結果は、進一の方が上だった。しかし、進一はあれほどあきらをぬきたかったのに、ぬいてもぜんぜんうれしくなかった。反対にあきらがうらやましかった。そしてあきらが自分からはなれていってしまうような気がした。
二学期も半ばになると、志望校調査が行われた。進一の志望校は県立K高校だ。先生も、君なら大丈夫だと、太鼓ばんをおしてくれた。
あきらが転校するらしいといううわさが流れ出したのは、そのころだった。
「あきら君、きみほんとうに転校しちゃうのかい?」
「ああ、そうなんだ。父が転勤するもんだから。きみはいいライバルだったよ。ありがとう。」
翌日、あきらの送別会が行われた。となりの県にひっこすそうだ。
進一は悲しかった。涙がとりとめもなく流れた。今まで、あきらを目標にがんばったのに、そのあきらが転校してしまうなんて―。そう思うと、むしょうに悲しかった。
あきらは、
「どうしてだ?ぼくがいなくなれば、きみはゆうゆうと一位をとれるじゃないか。」
と言った。その通りだ。しかし進一は、あきらがそばにいてくれないと、だめなような気がした。
「あきら君と親友になりたい!!」
強くそう思った。
あきらは、転校した。A県のF中学校だ。進一はというと、あれから勉強しなくなり、成績も下がった。
「どうしたの?そんなことじゃ、K高校に入学できませんよ。」
母の言葉も、進一の耳にははいらなかった。
進一は、あきらに手紙を出すことにした。
『あきら君、元気でやっていることと思います。きみが転校して、もう一ヶ月。ぼくはあれから、勉強する気になれなくなってしまったのです。これじゃ、志望校へはいれないかもしれない。きみというライバルがいなくなってしまったから…。
きみがいなくなったから気付いたんだ。
きみがいたからこそ、ぼくが勉強できたことを。
ぼくの親友になってほしい。そして今までのように、ずっとライバルでいてほしい。
進一 』
進一がポストに手紙を入れて、三日めの夕方、あきらから電話がかかってきた。
「手紙読んだよ。なるべく早く伝えようと思って電話したんだ。
ぼくも前から、きみと友だちになりたかったんだ。
ぼくでよかったら、きみの親友にしてくれ。」
「ほんと?」
「うん。だから、勉強しなきゃ、だめだよ。」
進一は飛びあがって喜んだ。今まであきらのほんの一部しか見ていないことに気付いた。あきらはほんとうは、やさしい人間だったんだ。友情って、こんなにすばらしかったんだ。
夕焼けが、進一の心をあらわすかのように、西の空を染めあげていた。
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いかがでしたでしょうか。
33年前に書いた、創作作文です。
何を書いたのか、ほとんど覚えていませんでした。
当時、市で発行していた「文集はままつ」に掲載されたものです。
「あきら」「進一」というのは、当時の歌手からもってきました。
にしきのあきら、森進一です(^^ゞ
それから、「全く、親というものは、子どもが机の前にすわっていれば、
安心なのだ。」は、痛烈に大人を批判したつもり。
それと、夕日に惹かれて写真をよく撮るのは、この頃に端を発しているのかも・・・
と思いました。
何だか、「友情 その後」も書けるかな?とふと思いました。
が、ちょいと無理ね。
今日は長文をお読みくださいまして、ありがとうございました <m(_ _)m>




